› 陶工房の日々ー湖東からー

2010年02月03日

焼き〆備前風徳利



穴窯や登り窯の場合、焼成に薪を使うので、釉薬を使わなくても窯の中で自然と灰(薪が燃えて灰になったもの)が付着し、それが高温で溶けて釉薬となりますが、ガスや電気の窯ではそのような変化は望めません。
そこで、作為的に穴窯風の作品を作ってみました。
数年前に備前に旅した折に、地元の窯元を見学し、その時に入手した備前の土を使って製作しました。素焼きの後、一部に松灰をかけてから焼きしめにしてあります。
備前の土は粒子が細かいので、焼きしめにしても水が漏るようなことはありません。また、土の密度が高いので、大きさの割りに少し持ち重りがします。安定感の必要な徳利や花器には向いた土質と言えると思います。

この作品に使った松灰は、自作したものです。
雑木の灰や粘土など、やきものはもともとは自然の素材でできています。なので釉薬となる灰も、昔からその地域の雑木を使って作られてきました。また木の種類によって、焼き上がりの釉薬の色も微妙に違ってくるところが陶芸のおもしろいところです。
以前、松の木を大量に伐採するというので、そこに立会い枝をもらって松の灰を自作しました。
灰は木の幹の部分でもできますが、質のよいものは細い枝や葉から作るのが、よく溶けていいとされています。
また枝の燃やし方にもコツがあります。普通に火をつけて燃やすのではなく、火の勢いを弱くして蒸し焼きのようにし、黒い灰にすることが肝心なんだそうです。枝を焼ききって白い灰にしてしまうと、釉薬としては使い物になりません。
沢山の枝を燃やしても、良い灰というのはほんの少ししか取れません。木の枝には不純物も多く含まれていますし、時には木肌に小さな石や金属などを巻き込んでいる事もあります。あの時は2t車10台分も松の枝をも燃やしましたが、灰にして、それを漉したりするうちに(ほとんどが使い物にならない部分)20リットルくらいしか取れなかったのを思い出します。
まあそれでも、器1つに対する灰の量などはごく微量なものなので、たくさんの器に使用することが可能なのですが。

自分で作った灰はやはり愛着もあり、味のあるものだと思います。昔ながらのやりかたもいいものですね。
  


Posted by 陶工 at 10:22Comments(0)制作裏話

2010年01月18日

東京スカイツリー



久々のブログです。
猫手は1月12日まで東京(品川)で仕事してまして、久々に戻ってきたら今度は自分のパソコンが壊れてしまいました。
今は陶工のパソコンを借りて書いていますが、やっぱり人のモノは使いづらいです。はやく新しいのが欲しいなぁ。
波乱の予感の2010年のスタートですが、今年もよろしくお願いします。

仕事をしていたのは品川ですが、宿泊していたのは蔵前(浅草と両国の間くらいにあります)というところです。昔でいうところの「大川」、隅田川の近くのマンションを借りていました。毎日大川を見ながら出勤、なかなか気分のいいものでした。
海が近いので、流れによっては潮の香りがしたり、提灯を下げた観光屋台船を見かけたり、情緒のある下町です。品川とは離れているようですが、実は地下鉄一本で行けたりして案外近くて便利な場所にあるのです。

その隅田川にかかる厩橋から、現在建設中の東京スカイツリーが見えました。
武蔵の国にちなんで634mになるという予定のスカイツリーは現在264m。この高さでも周囲にあまり高いビルがないせいか抜きん出て高く見えています。完成したら相当圧倒されるのでしょうね。2011年、完成したらぜひ展望台に登ってこようと思います。

東京スカイツリー  


Posted by 陶工 at 09:40Comments(0)おでかけ

2010年01月01日

謹賀新年



あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

作品は「ぐいのみ ひょうたん・梅」

家庭内で、お皿や湯のみなどは揃いのものを使われることが多いですね。その方が収納も便利ですし使い勝手も良いのだと思います。
しかし、ぐい呑みなどは1点ものとして扱われることが多いようです。我が家にもたくさんのぐい呑みがありますので(当然ですが、笑)、その日の気分によって選ぶこともあります。

時折こんな遊びもやります。
陶器のぐい呑みをそれぞれ選んで、それを1年ほど使います。日々使ってゆくうちに陶肌がいい感じに変化してゆきますので、どちらのぐい呑みがきれいに変わったか議論するのも楽しいものです。

いろいろなぐい飲みを揃えて、その時の気分や意味合いで選ぶのも楽しいことですね。
新年のお酒をこんなおめでたい柄で飲み初めなどいかがですか?

  


Posted by 陶工 at 20:00Comments(0)器と食

2009年12月22日

色絵のはなし



「色絵陶板 ざくろ」

前回色絵の作品をご紹介しましたが、今回も色の話の続きです。

画像の向かって左が色絵付けを終った段階。右が窯から出したところ(完成)。
粘土が生の時より、乾燥と焼成の段階で15%ほど縮むので、ふた回りほど小さくなったような印象があります。

ザクロの赤の部分は弁柄で描いています。この赤は焼いても赤なので、あまり印象は変わりません。
周囲のピンクっぽい色の顔料ですが、これは元々は銅(酸化銅)からできた顔料です。
窯の焚き方によっても変化しますが、ピンクが濃い緑に変化しています。

このように色絵の色は、窯の中で変化するものが多いので、色絵を制作するにはこの顔料の特質をよく知らなければなりません。
簡単に記しておきますと

酸化銅(緑青)→緑
弁柄(酸化第二鉄の加工物)→黄色や赤(濃度や温度によって変わります)
コバルト→紺
二酸化マンガン→紫

これらの他にも様々な素材や組み合わせがあります。原料屋に行けばすでに調合された色絵の具も売られていますが、松風工房では富本憲吉先生が工夫されたものを元に、師の松風栄一が改良を加え、さらに陶工が自分の窯と作風に合ったものに改良したオリジナルのものを使っています。

絵の具は鉱物なので、それぞれに溶ける温度が違ってきます。多色使いすればするほど、焼け具合もばらついてくるのです。
そこで、全部の色が同じ温度で均一に溶けるように工夫するのが、難しくて面白いところです。


猫手がしばらく留守にするため(猫のイベントで東京に行きます)、次の更新は年が変わってからになります。
なかなか更新できないブログですが、みなさんいつも読んで下さってありがとうございます。これからもがんばって&マイペースで続けてゆきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
  


Posted by 陶工 at 09:48Comments(2)制作裏話

2009年12月16日

色絵菓子鉢



「色絵菓子鉢 草花紋」
器の外と内に色絵付けを施した、陶房の中では少し珍しい作品です。

普段器はまず、素焼きをした後に、内がけといって器の内側部分に先に釉薬をかけ、その後に外側部分を絵付けすることが多いです。
これは外側に絵付けした絵を保護するために(呉須で絵付けをして乾いても、上からうっかり擦ったりすると絵がにじんだり薄くなったりするため)、あらかじめ内側の作業を先に済ませてしまうという事なのです。

この菓子鉢の場合はその順番が異なって、まず素焼きの後に内側に呉須で絵付けをしました。
それから内側に釉薬をかけ、その後に外側に呉須絵付けをします。絵付けの後に外側にも釉薬をかけて本焼きをします。呉須の絵付けのみで仕上げる作品の場合はここで完成です。
この作品にはその後さらに色絵を施しています。



色絵の絵の具は、以前にも描きましたが溶いた片栗粉のような状態です。ガラス質の球面の上に置くように塗ってゆくのですが、これがなかなか根気の必要な作業です。
フラットな状態じゃないと流れてしまうので、器をそのような角度(絵を描こうと思う部分を上に平らにする)で固定し、フラットになる部分だけ作業します。
早く作業しすぎると流れてしまうので、少しずつ塗っては乾かし、乾いたら器の位置を回転させて、常に作業面が上面を向いているようにして作業を行います。なのですごく時間がかかります。
また、塗った部分をうっかり手で触ったりしないように気も使います。このため、日本画と同じように腕や手を置くための台を使って作業する事もあります。

色も焼き上がりと元の色が違うので(この話はまた後日)、色絵の窯から出るまで仕上がりも想像しにくい作品です。それだけにうまく作れた時の喜びは大きいものになります。

  


Posted by 陶工 at 20:15Comments(0)制作裏話